りぼんの読書ノート

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世界の歴史9「第二次世界大戦と戦後の世界」(J.M.ロバーツ)

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昨年12月からゆっくりと読み始めた「世界の歴史」も現代に近づきました。第9巻では、1939年に勃発した第二次世界大戦によって引き起こされた人類史上未曾有の混乱と危機と、それがもたらした戦後の世界構造を描きます。

第2次世界大戦については、ここで詳しく触れる必要はないでしょう。ドイツのナチ党の台頭、ユダヤ人の大虐殺、独ソによるポーランド侵攻、日本の中国大陸進出、真珠湾攻撃スターリングラード北アフリカ戦線、ノルマンジー上陸、原子爆弾の投下・・。

極論すれば、恐慌と政治不安からの脱出が、極めて帝国主義的な方法しか想定され得ない時代背景が、戦争を引き起こしたと言えるのかも知れません。すなわち「持てる国」での資源囲い込みによる排他的経済圏の創設であり、「持たざる国」での既成世界秩序の打破が、それにあたります。戦争が終わってもたらされたものは、欧州の没落と、共産主義勢力の拡大、中国を含むアジア諸国の植民地からの解放、そして東西冷戦構造でした。

現代史を語ることは難しいですね。どの時代の歴史を語る上でも「語り手の史観」が現れてくるものですが、とりわけ現代史においては「史観=政治的立場」となってしまいます。だから、19世紀は「ヨーロッパの時代」であったのに対し、20世紀は「ポストヨーロッパの時代」となったとか、「日本が勝利してもヨーロッパがドイツに支配されたほど悲惨な結果は生じなかったであろう」といった、著者の見解にはコメントせずに、一般的傾向だけをここに記しましょう。

数十万年の長きに渡って、人類史は地域的分立と多様化に進んできたのに、16世紀の大航海時代を境に逆流がはじまり、合流のプロセスに入ったというのが、著者の見解です。真の合流のためには、「民族主義の克服」が必要なのでしょうが・・。

そして著者の次の言葉に賛意を表して、このレビューを終えることにします。「私たちが同時代の歴史を見るにあたってできることは、目の前で起きている圧倒的されるほど大きな出来事を、歴史の流れの中で、さまざまな視点から理解しようとつとめることだけだといえるでしょう。」

2007/8