りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ケナリも花、サクラも花(鷺沢萠)

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20歳を過ぎるまで韓国の血が流れていることを知らなかった作者は、「ハングルに感電」して韓国に半年間の語学留学を果たすのですが、彼女にとっての「1/4の祖国」は、決して優しくはない国でした。

インタビューでは必ず「韓国に対する祖国愛を感じるか?」と聞かれ、彼らの思う「韓国語を学ぶ僑朋」という類型に当てはめようとされる。わからないことを知っていると言い、できないことをできると言う独特の「恥の感覚」を持つ、韓国人の性格にイライラさせられる。彼女が見た韓国は、強烈な仲間意識と、自己主張と、祖国愛に浸り、在日韓国人である僑朋のことも、理解してくれない国だったのです。

でも、彼女は、韓国に対して切ない思いを抱きます。恥ずかしい「身内」だからこそ、かばいたくなる。相手はこっちを「身内」とは認めてくれてもいないのに・・。

一方で、韓国に対して傲慢な態度をとる日本人に対してはもちろん、韓国に対して遠慮するのみで韓国のことを深く知ろうともしない日本人にも怒りを感じてしまう。日本人でも韓国人でもなく、正確には僑朋でもない、彼女が感じるいたたまれなさが、彼女を円形脱毛症にさせ発熱させてしまうけど、彼女はまだ、降参しません。傲慢さを排し、相手を理解しようとする想像力をほんの少しでも働かせれば、世界はもっとよくなるはず・・と思うのです。

韓国人の愛するケナリ(レンギョウ)の花が咲き誇っている背後で、サクラの花が美しく咲いている写真を見て、とっても嬉しく感じる彼女の気持ちが、痛いほど伝わってきます。姉妹編の『君はこの国を好きか』と、合わせて読んで欲しい一冊です。

2007/2