りぼんの読書ノート

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アナンシの血脈(ニール・ゲイマン)

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冴えない人生を送っているチャーリーの、長年別居していた父親が急死。葬儀に駆けつけた彼に告げられた、驚天動地の衝撃の事実とは、「あんたの父さんは神だったからね~。」!!!

そういえば父親アナンシにはいつの間にか何でも思い通りにしてしまう不思議な才能があったけど、チャーリーは何の能力も授かっていません。そこに現れた、今まで存在すら知らなかった双子の兄弟・スパイダーは、父親の不思議な能力を受け継いでいたのですが、彼の自由気ままさによってチャーリーの生活はめちゃくちゃにされちゃうんですね。婚約者は奪われ、仕事は首になり、横領の容疑まで着せられてしまう。スパイダーを追い出そうと、不思議な契約を交わしたチャーリーですが、契約に隠されていた罠によって、いっそう窮地に追い込まれてしまいます。

アナンシとは、アフリカ神話に登場する「蜘蛛の神」だそうです。いたずら好きで周りに迷惑をかけまくるのに、憎まれないトリックスター。以前は「トラの神」が司っていて闘いを賛美するだけだった「物語」を横取りして、おもしろおかしい「物語」へと変えたのも、アナンシ。物語は蜘蛛の巣と一緒で、縦糸と横糸が紡ぎ合わされて作られる。蜘蛛の巣の中心まできたら、そこが物語の終わりだそうです。そういえば、ヨーステイン・ゴルデルも『サーカス団長の娘』で、次々と紡ぎ出される物語を蜘蛛の糸に例えていました。

ストーリーに戻ります。そもそも、なぜ、双子のスパイダーだけが神の能力を授かり、チャーリーには何も残されていないのでしょうか。チャーリーは、どうやって窮地を脱することができたのでしょうか。そして、神であるアナンシは、本当に死んでしまったのでしょうか。

おもしろかったですよ~。こういう奇想天外な発想を上手に纏めた本は、結構ツボにきます。「物語」を楽しいものへと変えてくれたアナンシにも、大感謝です。

2007/2