りぼんの読書ノート

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チンギス紀 3(北方謙三)

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父イェスゲイの死で四散したキャト氏族を糾合したテムジンは、2000騎の精鋭を旗下に収めます。ついにモンゴル族の覇権を賭けたタイチウト軍との決戦に勝利するかと見えたその時に、意外なことが起こります。黒い旗を掲げた50騎の騎馬隊がテムジン軍を蹂躙し、ついでにテムジンへの助成に駆け付けていたジャムカ軍をも、散々に打ち破るのです。

これはタイチウト氏の軍師オルジャが、密かに雇っていた玄翁と呼ばれる老人の部隊だったのです。どうやら圧倒的な気を放つ玄翁とは老いた胡土児のようなのですが、中華での覇権を賭けた戦いから遠ざけられていた胡土児は、志を失って単なる傭兵に成り果ててしまったのでしょうか。

本書の中で著者は、ケレイト王のトオリルに北方の情勢を語らせています。草原における戦いの本質は金国と西遼という2大国の代理戦争なのであり、モンゴル族の内訌やケレイトとメルキトの諍いなど、実は小さなことなのだと。いわば「コップの中の嵐」にすぎないのですが、やがてテムジンがコップどころか周囲の全てを討ち壊してしまうことなど、まだ誰も知りません。

いよいよテムジンが動き出しました。そこに胡土児がどう関わっていくのか、『大三国志』からの読者としては大いに気になるところです。

2019/6