りぼんの読書ノート

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チンギス紀 5(北方謙三)

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ようやくタイチウト氏族との決戦に臨んだチンギス。兵力の上では3500騎対1万5000騎と劣勢ですが、鉄製のひじりによって飛距離の延びた矢、豊富な替え馬による速さの確保、新編成によって集散自在な百人隊などの事前準備によって、軍としての質が根本的に異なっているのです。チンギスの不安はただひとつ、玄翁の存在だけでした。そしてタイチウトの長であるタルグダイに手が届こうとした時に、2人の対決の時が訪れます。

 

本巻ではついにチンギスと玄翁の関係が明らかになるのです。1対1の対決を前にして、玄翁はチンギスに何を告げたのでしょう。このあたり、まるでスター・ウォーズの世界ですね。そして母ホエルンの秘密が明かされ、梁山泊の流れを引く沙州楡柳館で宣凱と会ったチンギスのもとに、あの剣が届けられます。

 

宣凱・・懐かしい名前です。あの時代の胡土児が老いるほどの年月が過ぎ去った今、もちろん宣凱も老いており仕事は息子の宣弘に引き渡されていますが、気力は衰えてはいません。彼から楊令の物語を聞いたチンギスは、何を思ったのでしょう。なおかつての梁山泊は、「替天行道」の志を抱いた者たちが轟交庫や楡柳館、さらには南方や東海などに広く散らばることで発展的に解消された模様。チンギスの前に登場する者もいそうな気がします。

 

モンゴルの西方ではメルキトとケレイトが再度激突します。奇襲を浴びて危地に陥ったケレイトのトオリル・カンですが、メルキトの族長トクトアもジャムカに襲われて再び膠着。しかしアインガという後継者が育ちそうなメルキトと、息子のセングムが独り立ちしていないケレイトでは、この後の変化が異なってきそうです。そんな中でついに、タタールが金国から離反する動きを見せました。草原のパワーバランスが、大きく変わってきそうです。

 

2020/10