りぼんの読書ノート

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タンジェリン(クリスティン・マンガン)

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柑橘系フルーツのようなタイトルですが、本書の意味は「タンジール人」。独立前夜のモロッコの、ジブラルタル海峡に面したタンジールで、女性2人の情念が交錯するサイコスリラーです。スカーレット・ヨハンソン主演で映画化されるとのこと。

夫ジョンとともにアメリカからタンジールに移住しアリスは、もともと活発で魅力的な女性だったのですが、ある事件以来、半ば心を閉ざしてしまいました。うすうす夫の不実を感づいていたものの、異郷で夫に依存して生きています。そんな彼女のもとに突然飛び込んできたのが、学生時代の親友であったものの、事件を境として絶縁状態になっていたルーシーでした。

ずっとアリスを慕っていたルーシーは、彼女の現状を肯定できません。しかし友情の復活を望んでいたルーシーの目的も、タンジールの灼熱の太陽に焦らされる中で変容していきます。そして学生時代に起こった事件にも、彼女は深く関わっていたようなのです。アリスの心に芽生えた疑念と、ルーシーの企みは、どのような結末を迎えるのでしょう。

興奮状態の異郷の街という舞台が、主人公たちの正常な判断を奪っていくようですが、「独立」というテーマを深読みする必要はなさそうです。映像化すると、また異なる視覚と音響の効果が得られるのでしょうが、あまりにも一方的な結末は少々期待はずれでした。

2019/3