りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ローカル・カラー/観察記録(トルーマン・カポーティ)

イメージ 1

カポーティのノンフィクション・エッセイ集『犬は吠える』の第1分冊であり、第2分冊の『詩神の声聞こゆ』も同じ「ハヤカワepi文庫」から出版されています。著者は、自作を批判されて落ち込んでいる時に出会ったアンドレ・ジイドから「犬は吠える。がキャラバンは進む」というアラブのことわざを教えてもらったとのことです。

「ローカル・カラー」は、1946年から1950年にかけて、著者が22歳から26歳という若い時代にさまざまな雑誌に発表された紀行文に、数編を加えたもの。ニューオーリンズ、ブルックリン、ハリウッドなどのアメリカ各地には、まだ超大国の大都市というイメージはありませんね。パーティに開催に苦心するニューヨーカーの生活は、ティファニーで朝食をの一幕のようです。

ヴェネティア、タンジール、ギリシャなどの「海外編」では、シチリアで若い料理女からもらった羽根を切られたカラスに対して、次第に愛着を感じるようになってくる「ローラ」が印象に残りました。当時の食料事情は最低だったようですが、シチリアの美しい情景描写には著者の愛情がを感じられます。そういえば老ジイドと出会ったのもシチリアでのことでした。

「観察記録」は、1959年に単独で出版された人物論に、「マリリン・モンロー」などの数編を加えたものであり、当初は写真家リチャード・アヴェドンが撮影した写真と組み合わせた作品だったとのこと。モンローをはじめとしてハンフリー・ボガートやメイ・ウェストら映画スターの人物スケッチは出会いの瞬間を鋭く切り取った印象ですが、アイザック・ディネーセンやシドニーコレットという老いた女流文学者たちの描写には深い凄みを感じます。短い時間の出会いであったにもかかわらず、彼女らの人生が浮かび上がって来るようでした。

2018/11