りぼんの読書ノート

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鯖猫長屋ふしぎ草紙 3(田牧大和)

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かつての義賊「黒ひょっとこ」で今は画描きの青井亭拾楽が、鯖縞模様が美しいオス三毛猫サバと移ってきた長屋を舞台とする、ちょっと不思議なお江戸ミステリの第3弾。たびたび霊感を発揮して長屋の危機を救ってきたサバはもはや人間よりも偉く、長屋の通称も「鯖猫長屋」となってしまっています。

娘の嫁ぎ先からいつの間にか実家に戻ってしまう、謎めいた「出戻り文箱」の顛末。長屋の魚売り寛八が岡惚れした人妻の夫の浪人が押し込み一味と疑われる「鯵の三枚おろし」、豪勢に舟を仕立てて「長屋の花火」を楽しんでいた隙に、健気な娘に魔の手が伸びる物語。

連作短編でありながら、全部合わせてひとつの長編になっています。病を得た「文箱」の娘を離縁した大店の息子が、長屋の住人たちから愛されているおはまにプロポーズしたのはなぜなのか。サバが毛を逆立てておはまに飛びかかったのはなぜなのか。長屋周辺で頻発している奇怪な事件はどこに行きつくのか。そして。まるで普通の猫のように悪人に捕まってしまったサバの「猫かぶり」の目的は何なのか。

長屋の常連メンバーや、芝居好きの同心「成田屋」こと掛井や、深川の「ニキのご隠居」喜左衛門らも大活躍。おはまの純情を素直に受け止められない拾楽がワケアリなのは承知ですが、今回はシリーズ全体を貫いている謎のほうは、しばしお休みの巻でした。

2018/10


【鯖猫長屋ふしぎ草紙シリーズ】
鯖猫長屋ふしぎ草紙
鯖猫長屋ふしぎ草紙 2
・鯖猫長屋ふしぎ草紙 3