20世紀初頭の西オーストラリア。第1次大戦から帰国したトムは、「人々からも記憶からも充分に離れ」、灯台守となって孤島ヤヌス・ロックに赴任。最寄りの町で知り合った朗らかな妻イザベルと結ばれ、幸せを意識し始めた2人に転機が訪れます。
それはイザベルが3度目の流産をした直後、島に漂着したボートでした。父親とおぼしき男性は既に死亡しており、生後間もない赤ちゃんだけが生き残っていたのです。イザベルの懇願に負けて、ルーシーと名付けた赤ちゃんを実子と偽って育て始めたトムでしたが、夫妻にとってルーシーはかけがえのない存在になっていきます。
しかし、外界から孤絶された幸福は続きません。2年後に休暇で本土に戻った夫妻は、海で行方不明になった夫と娘を必死で探し続ける母親ハナの存在を知ってしまうのです。罪の意識を感じながらもルーシーを手放せない妻と、過ちを正すべきと思う正義感の間で、トムの心は揺れ動くのですが・・。
タイトルの「海を照らす光」とは、真実を照らす光のこと。正義感を満足させるために周囲の人々を不幸に陥れて良いものなのか。あるいは皆の幸福のために正義を曲げても許されるのか。同じ問いが、はじめはトムに、次いでイザベルにも投げかけられます。愛ゆえの苦悩が丁寧に描かれた作品であり、2016年にドリームワークスによって映画化されたことも頷けます。
2018/10