りぼんの読書ノート

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鯖猫長屋ふしぎ草紙 8(田牧大和)

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かつての義賊「黒ひょっとこ」で今は画描きの青井亭拾楽が、不思議な力を持つオス三毛猫サバと長屋で暮らす、ちょっと不思議なお江戸ミステリの第8弾。本作も拾楽の過去や将来とは直接関わらない物語なのは、このシリーズを長く楽しもうという著者の思いによるのかもしれません。

 

通称「鯖猫長屋」の家主で饅頭屋を営んでいるお智の様子がおかしいと聞いた拾楽は、サバを連れて店に出向きます。しかし突然現れた不気味な白い鴉を見たサバは逃げ出してしまいます。それどころか普通の猫になってしまったかのように振舞い始めてしまうのです。いったいサバに何が起こったのでしょう。そしてお智の店では何が起こっていたのでしょう。

 

今回「敵」として現れたものは、かなり危ない存在でした。強い力を持ちながら心が未発達な者というのはヤバそうです。しかし本書では、これまでボンクラ扱いだった「成田屋の旦那」こと北町同心の掛井が大活躍。妖しを視る力も感じる力もない反面、妖しの影響を受けない人物というのもある意味頼もしい。それと本書ではサバの妹分にあたる子猫さくらも大活躍でした。拾楽とおはまの恋愛は、やはり少しだけ進んだようです。

 

2022/5