りぼんの読書ノート

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鯖猫長屋ふしぎ草紙 7(田牧大和)

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かつての義賊「黒ひょっとこ」で今は画描きの青井亭拾楽が、不思議な力を持つオス三毛猫サバと長屋で暮らす、ちょっと不思議なお江戸ミステリの第7弾。拾楽の過去に関わる物語も多いシリーズですが、前作あたりからは長屋の人々を巻き込もうとする禍々しいものに対する対決色が強く出ています。いまだ明かされていない拾楽の待ち人の登場もまだ先のようです。

 

かつてこの長屋に住んでいた戯作者の長谷川豊山が戻ってきました。豊山には彼を慕う元遊女・山吹の霊が憑いていて、彼を見守っているのですが、本人はそのことを知りません。妖しい物語を書き綴っているくせに、彼には視る力などないのです。しかし売れっ子になっている豊山が、長屋に戻って身を潜めようとしているのには、どのような理由があるのでしょう。サバは落ち着いているようですが山吹の霊は何かを恐れているようです。

 

実は、豊山が書いた戯作の筋に似通った事件が起こっていたのです。はじめは偶然のようなもので、続いて起こった事件も他愛のないものだったのですが、次第に不気味な事件へと変容しているようです。長屋を仕切っているおてるの亭主・与六の子と名乗る男の子が現れたのには、どのような理由があるのでしょう。拾楽とサバは、愛すべき長屋の住人たちを守り切れるのでしょうか。妖しよりも人のほうが恐ろしいようですが、今回の主役は山吹でしたね。拾楽の恋愛は少しだけ進んだようですが、まだ先は長そうです。

 

2022/5