りぼんの読書ノート

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鯖猫長屋ふしぎ草紙 5(田牧大和)

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かつての義賊「黒ひょっとこ」で今は画描きの青井亭拾楽が、鯖縞模様が美しいオス三毛猫サバと長屋で暮らす、ちょっと不思議なお江戸ミステリの第5弾。この長屋で暮らしていた弟分を亡くしている拾楽は、ここで「誰か」を待っているようなのですが、その謎はまだ明かされていません。

 

本巻で拾楽を訪ねてきたのは、昔馴染みの女盗賊あざみ。男どもを手玉に取って周到な計画を立てる冷静沈着な女盗賊は、かつて捨てた自分の息子が隠居同心の菊池に育てられていることを知り、拾楽に協力を依頼してきたのです。はたしてその動機は息子への愛情なのでしょうか、それとも・・。その一方で「ニキのご隠居」として未だに隠然たる力を有している菊池もまた、あざみと決着をつけるために拾楽を味方につけようとしています。その少年・太一にとっては、何が望ましい決着なのでしょう。

 

江戸時代には、捨て子、迷い子、攫われ子が多かったようです。4年前に攫われた植木職人の息子の消息が判明するエピソードも描かれますが、実はこれもあざみの仕業だったのですね。不思議な力を持っているらしいサバにはあざみの魂胆が透けて見えているようですが、人情というものは簡単に割り切れるものではないようです。拾楽と長屋の娘おはまとの関係も難しそうですね。あざみが彼女に余計なことを吹き込んだことが新たな火種になるのですが、それは次巻の物語になります。

 

2022/4