りぼんの読書ノート

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時計じかけのオレンジ(アントニイ・バージェス)

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スタンリー・キューブリック監督による映画化作品を見たことがありますが、あまりの暴力描写の激しさにうんざりした覚えがあります。本書はその原作ですが、エンディングが違っていますね。

 

近未来(といっても本書が書かれた1962年からみての近未来なので、あまり未来感はないのですが)の英国の物語。高度に管理された社会に倦んでいるアレックスの気晴らしは超暴力。ワル仲間と徒党を組んで、暴行、強盗、強姦、破壊行為などを、けたたましく笑いながら繰り返す毎日。しかし老婆を殺害したことで、ついに逮捕されて長い刑期を宣告されます。この時アレックスは15歳。映画では当時20代後半だったマルコム・マクダウェルが演じていたので気づきませんでしたが、主人公の幼さに唖然とさせられます。

 

そして刑務所内でも行動が改まらなかったアレックスに対して、暴力を否定する「条件付け」が行われるというのが、本書が斬新だった個所ですね。そして彼は釈放されるのですが、暴力に対して無防備となった者が生存しえるのか・・ということが問題提起なのです。タイトルの「時計じかけのオレンジ」とは、中身が機械でできている生命という意味ですね。

 

ところで映画は、アレックスが「条件付け」から解放される第3部第6章の場面で終わっていますが、原作には第7章があるのです。18歳となったアレックスが大人として成熟することを示唆しているのですが、映画のみならずアメリカの出版社もカットを望んだとのことです。あくまでもセンセーショナルな作品として売り出したかったのでしょう。

 

2022/4