りぼんの読書ノート

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大江戸火龍改(夢枕獏)

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江戸時代末期、火附盗賊改の裏組織として存在する火龍改の相談役を務める謎の人物・遊斎を主人公とする物語。しかし捕物帖的な要素は少なく、結局のところ『陰陽師シリーズ』に似通った作品になってしまったようです。

 

人形町の鯰長屋に住む年齢不詳の遊斎は、与力の間宮や、剣の達人の如月や、不思議な力を持つ飴売りの土平のみならず、蘭学者の平賀源内までを知己としています。普段は子供たちの唐芋を盗む土鯉を捕まえたり、長屋の住民に寄生した呑虫を退治したりしているのですが、本業は「万怪事相談」。依頼に応じて、不倫内儀の生霊に取り付かれた大店の小僧や、吉良上野介の幽霊に悩まされる釣り名人を軽々と助けたりしています。

 

しかし、大店の内儀が満開の桜の樹上で食い殺されたり、後継ぎの息子がひからびて亡くなった一連の事件は厄介でした。異形の人犬が「事件から手を引かなければ殺す」と遊斎を脅しに来る始末なのです。もちろん遊斎たちは事件を解決に導くのですが、結構きわどい勝負を強いられてしまうのでした。犯人ではありませんが、事件の背景には、『陰陽師シリーズ』の蘆屋道満を彷彿とさせる播磨法師とやらがいたのですから。

 

ひょっとすると遊斎の正体は安倍晴明で、播磨法師の正体は蘆屋道満なのかもしれませんね。2人とも呪によって千年近い年月を生き延びているという設定もありえるのでしょうから。

 

2021/1