りぼんの読書ノート

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鯖猫長屋ふしぎ草紙 2(田牧大和)

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かつての義賊「黒ひょっとこ」で今は画描きの青井亭拾楽が、鯖縞模様が美しいオス三毛猫サバと移ってきた長屋を舞台とする、ちょっと不思議なお江戸ミステリ。前巻永代橋の崩落を予見して、長屋の面々を救ったサバは、長屋で一番偉い地位を獲得しています。

7編の連作短編からなっている作品ですが、全部合わせて1本の長編と捉えた方が良いでしょう。「黒ひょっとこ」を逆恨みしている謎の存在が、拾楽と長屋に対してさまざまな揺さぶりをかけた末に、最後の対決に至る物語。

鯖猫長屋に引っ越してきた元女形の団扇売に因縁を付けられても、偽「黒ひょっとこ」から貰ったあぶく銭に浮かれた大工が吉原で身請け騒ぎを起こしても、長屋の小間物行商人のところに転がり込んできた翡翠玉を手に入れようと悪人が騒ぎを起こしても、霊感を持つらしいサバの子分を自認する拾楽は動じません。口をきけないサバの指示はわかりにくいんですけどね。

しかし悪事を重ねる偽「黒ひょっとこ」と謎の黒幕と最後の対決に臨む際には、これ以上の迷惑がかからないよう長屋を出ていく覚悟をしたようです。そのおかげで、チビ三毛猫のさくらも仲間に加わったのですけれど。

老練な長屋の差配・磯兵衛、長屋を仕切る女房・おてる、拾楽を慕う健気な娘・おはま、その兄の魚売り・寛八、気のいい野菜売り・蓑吉、若い行商人夫婦・清吉とおみつなどの長屋のメンバーに、元女形の色男・涼太や、前巻で敵討ちをした饅頭屋の女あるじ・お智が加わりました。芝居好きの同心・「成田屋」こと掛井や、戯作者・豊山らが加わった常連メンバーの活躍は、まだまだ続きそうです。

意表を衝く仕掛けを得意とする著者の作品としては、ほっこりしすぎて地味なのですが、長く続くのはこういう作品なのでしょう。濱次お役者双六シリーズが、全6巻を通じて濱次の成長というテーマを描いた作品であるように、本書にも全巻を貫くテーマがあるようです。

2018/10