りぼんの読書ノート

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レディ・ヴィクトリア 1(篠田真由美)

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現在では超高級住宅街となっているロンドンのチェルシーですが、ヴィクトリア時代には下町であり、貴族が住む地域ではなかったようです。そんなチェルシーに住むレディ・ヴィクトリア(ヴィタ)は、先代シーモア子爵が晩年に再婚したアメリカ生まれの、まだ若い未亡人。レディズメイドのシレーヌ、執事のディーンらと暮らし、妖精と呼ばれる彼女のもとに、さまざまな問題が持ちかけられてきます。

著者は本書で、ヴィクトリア時代の使用人たちの生活を描きたかったようです。第1話で登場するのは主人が開いたパーティで盗まれた宝石の行方を尋ねに来た侍女だし、第2話で相談人のフランス人詩人を連れていくのは、謎めいたお向かいの屋敷に興味津々の侍女。そしてヴィタの仇敵である女性は、侍女に扮装して彼女のもとに現れるのです。

ヴィタの仇敵とは、先代シーモア子爵の再婚に反対していた息子の現子爵と、その妻であるレディ・オーガスタ。とりわけ陰湿で厄介なのは、ヴィタに先代子爵を奪われたと思い込んだ義母に同情的なオーガスタであり、破滅型のフランス人詩人を介してヴィタを罠に陥れようとしたのは、彼女だったのですね。

本書では、ヴィタとオーガスタの和解はなりません。ヴィタよりも冷静なシレーヌや、ヴィタに忠誠を尽くすディーンらの背景も不明のまま。本書はシリーズ化されていて、そのあたりはこれから明かされていくのでしょう。ラストに登場した少女ローズが、ヴィタの新しい侍女として次巻からの語り手になりそうです。楽しいシリーズになりそうな予感がしています。

2018/9