りぼんの読書ノート

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団塊の後(堺屋太一)

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戦後の高度経済成長とバブル景気を経験した第一次ベビーブーム世代を団塊の世代と名付け、『平成三十年』などの著作で、団塊の世代が定年を迎えた後の閉塞社会を予測した著者が、さらに次の時代を予測した作品です。

時代は2026年。東京オリンピック以降、深い停滞期に入っていた日本では、ついに団塊の世代も退場しようとしています。こんな時代に首相に就任した徳永が「身の丈に合った国」を掲げたのに対し、大阪都知事の杉下は、日本が世界の主要プレーヤーに留まるために「日本の倫理と仕組みと仕方の全面改革」を主張。これが、明治日本、戦後日本に続く「三度目の日本」という本書のサブタイトルとなっています。

国税や国家資産を分割する都道州制の導入や、労働人口を確保するための二つ目の仕事や、医療や大学システムの移出による次世代日本人の創出などという対策については、少々唐突な感もあり、実現性や効果を吟味しなくてはならないでしょう。しかし「人口危機、低欲社会、経済縮小危機、財政危機、減種危機」という5つの危機は、もう起こっていますね。

とりわけ「夢ない、欲ない、やる気ない」の低欲社会化は、著者がもっとも気にしているもののようです。しかも清潔で安全な国を維持しながら、保育所待機児童問題や、働き方改革、女性の社会的進出などの改善が大幅に進んだという前提に立っても、この傾向は止まっていないというのですから。著者は「天国を創ってしまった」ことこそ問題というのですが・・。

一方で、元官僚であった著者の反官僚主義は徹底しています。「議員定数を大幅に増やして、改革に反対する官僚を政治家にしてしまう」という政策には笑ってしまいましたが、新しい時代への活力は民間から生まれるというのは、その通りでしょう。「民間」にもいろいろあるのですが。

2018/8