りぼんの読書ノート

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三美スーパースターズ(パク・ミンギュ)

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本書でデビューした著者にとって、忘れられない年は1982年のようです。韓国にプロ野球が誕生した年に仁川市の中学生だった少年は、地元の球団である「三美スーパースターズ」の熱烈なファンになるのですが、彼の期待は裏切られ続けます。

 

スーパースターズの初年度の勝率は1割台。未だに破られていない不名誉な記録を数々打ち立て、2年目こそは広島カープから移籍させた在日韓国人選手チャン・ミョンブ(福士)の大活躍で2位へと大躍進するものの、3年目は再び低迷。翌年には親会社の経営不振で売却されてしまいます。多感な時期に、屈折したファンであり続けた少年の、「プロ」による「競争社会」に対する幻想は打ち砕かれました。

 

とはいえ、もろもろの事情で一流大学を出て一流企業に入った主人公は、いやおうなく競争社会へと放り込まれます。しかし、長時間残業と理不尽な仕打ちに耐え、妻から離婚されるほど会社に尽くすプロの仕事人間たろうと努めたものの、IMF危機であえなくリストラ。絶望の底に沈んだ主人公を再生させてくれたものこそ、「打ちにくいボールは打たない、捕りにくいボールは捕らない」とまで言われた、かつてのスーパースターズの野球だったのです。

 

後に盗作を疑われた箇所もあり、生かされないエピソードや無駄に低俗的な表現も多く、村上春樹作品のC級の模倣と感じられる部分もあるのです。しかしその一方で、荒々しい迫力に満ちていて、後のピンポンを予感させてくれる作品なのです。

 

2018/5