りぼんの読書ノート

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雪月花黙示録(恩田陸)

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和文化を信奉する「ミヤコ民」と物質文明に傾倒する「帝国主義者」に二分された近未来の日本。春日、及川、三輪などの名家によって先導されているミヤコでは、将来のリーダーとしての座を約束される、学園の生徒会長選挙が重要な意味を持っているようです。

美青年剣士のような紫風が三選をめざす選挙戦に、妨害工作を仕掛けてきた「伝道者」と名乗る反体制勢力は何を目指しているのでしょう。紫風の従妹である女子高生剣士の蘇芳と萌木も、外部からの干渉に巻き込まれていくのですが、そこにはミヤコ成立にも関わる秘密が関係していたのです。

著者独特の用語でわかりにくいのですが、どうやら帝国主義とはグローバリズムが行きついた先でテクノロジーだけが肥大した社会のよう。一方のミヤコはそんな日本の将来に見切りをつけて、中世の鎖国状態に理想を見出した精神主義的な社会のようです。どちらも行き詰る道でしかなく、いずれは再融合が必要になるのでしょうがが・・。

近未来ラノベ風ファンタジーですが、著者の作品にしてはラストまで物語は破綻していないものの、逆にそこまで設定が膨らんでいなかったように思えてしまう作品です。

2018/4