りぼんの読書ノート

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錠前破り、銀太(田牧大和)

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「不味い蕎麦屋」を営む銀太、秀次の兄弟と、北町奉行所の吟味方与力助役の貫三郎という、異色の幼馴染たちが事件に巻き込まれていく物語。実は銀太の蕎麦が不味いのは、早逝した妻のおかるが茹ですぎの蕎麦が好きだったからなのですが、銀太とおかるの夫婦は「元盗賊」でもあったのです。もちろん現在は足を洗っています。

そんな蕎麦屋に、質屋の亀井屋に押し入ったという少年が逃げ込んできます。しかし貫三郎によると、その晩の盗人は既に捉えられて自白もしたとのこと。一方で同じ晩に辻斬り事件も起きており、捉えられた盗人は、実はそちらの犯人ではないかというのです。わざと軽罪で捉えられた秀次が牢内でその男から聞き出した話と、探し当てた少年の話を繋ぎ合わせると、「三日月会」なる謎の組織の存在が浮かび上がってくるようです。銀太はその組織が握る証文を奪うべく、亀井屋の蔵の錠前を破ろうとするのですが・・。

幼馴染の3人に加えて、美人でクールな緋名という女錠前師が登場してきます。彼女は緋色からくりの主人公ですね。彼女が飼っていた白猫の大福も健在です。実は絶対に破れないと評判の亀井屋の蔵の錠前は、緋名の作品なのですが、本書の趣向は「錠前師と錠前破りの対決」ではありません。むしろ緋名は銀太たちと同じ立場であり、彼女は仕事師としての仁義と正義感の間の葛藤を抱えてもいるのです。

しかし著者によると本書は「からくりシリーズ」のスピンオフではなく、「濱次お役者双六シリーズ」翔ぶ梅のスピンオフなのだそうです。女形たちが集まって騒ぐ「不味い蕎麦屋」から、本書の構想が生まれたというのです。いや、普通は気づきませんよね。

2018/4