りぼんの読書ノート

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青い眼がほしい(トニ・モリスン)

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ノーベル賞作家である著者が1970年に発表したデビュー作は、白人が作り上げた価値観を問いただす衝撃作です。

物語は、白人が理想とする「良きアメリカの家族像」を謳った、小学校教科書の一節から始まります。それを読んで「青い眼がほしい」と言った同級生に対して嫌悪感を抱いたことが、本書の原点だそうですから、本書のテーマは、著者が小学生時代から抱いていたものなのです。差別とは白人から黒人に対して行われるものだけではなく、白人的な価値観や美意識が優れていると信じさせられた黒人の間でも起こることに気付いた少女の悲しさや腹立たしさが、本書の中に込められているのです。

1941年のオハイオ州。自分の醜さが全ての不幸の理由と思い込んだ11歳の少女ピコーラは、「青い眼がほしい」と願います。まるで白人の審美眼にそぐう青い眼さえあれば、貧しさからも、父親の暴力からも、母親の絶望からも逃れられるかのように。かつては愛し合っていたはずの、両親のチョリーとポーリーンの夫婦仲ももとに戻るかのように。しかし彼女が得たものは、父親からの強姦によって生まれてきた子の死亡というおぞましい現実と、精神に変調をきたした彼女に「あなたの眼は誰よりも青いのよ」とささやき続ける想像上の友人でしかありませんでした。

そんな不幸な少女ピコーラの不幸を見つめる、視点人物のクローディアこそは、幼い日の著者なのでしょう。陰惨な物語であるのに読後感が暗くないのは、友人の身に起こった事件を通じてクローディアが、黒人を不幸にしているものの正体に気付いていくからなのです。

2018/4