りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

世界の合言葉は森(ル=グィン)

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「ハイニッシュ・ユニバース・シリーズ」の中編2作品。

「世界の合言葉は森」
森林が消滅した地球に木材を輸出するため、殖民惑星ニュータヒチでは原住種族アスシー人を奴隷のように使役しながら、大規模な伐採が進められていました。利益優先の乱開発で、惑星の生態系は崩壊寸前。ついに森を追われたアスシー人は地球人に牙をむくのですが・・。

この作品と風の十二方位に収録されている「帝国よりも大きくゆるやかに」を合わせると、まさに映画「アバター」です。クレジットにル=グィンさんの名前はなかったですけどね。

アオサギの眼」
こちらは先に地球から移住してきたシティー居住者が貴族化し、後から来たシャンティータウン居住者を抑圧しているという設定。前者の祖先が流刑になった犯罪者で、後者の祖先が平和主義者というのは少々安易に感じますが、両者の間には戦闘は起こりません。シャンティータウンの者は非暴力を貫き、新天地を求めて逃避するのです。

しかし対立軸はそれだけではありません。双方の男性たちが武力対決を求めたのに対し、女性たちはあくまで非暴力による解決を主張するのです。著者のフェミニストらしさを感じる作品です。両者の和解までを描く続編があってもよかったかもしれません。

2013/6