りぼんの読書ノート

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スワンプランディア!(カレン・ラッセル)

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南フロリダの湖沼地帯の小島で、時代遅れのワニ園「スワンプランディア!」を経営する家族は、崩壊の危機を迎えていました。ワニだらけの池に飛び込んで見せるスターだったママが癌で亡くなってしまったのです。

客足が絶えたワニ園の再生をあきらめない父親は、本土に金策へ。17歳の長男キーウィ―は、本土にあるライバルのテーマパーク「暗黒の世界」でバイトの清掃係に。15歳の長女オッシーは降霊術にのめり込んで、幽霊の彼氏と駆け落ち。残された13歳のエーヴァは、野鳥を操る怪しげな男バードマンに連れられて、姉を捜索するために「地獄」へと向かいます。

エーヴァがバードマンとともにボートで湖沼地帯を巡る幻想に満ちた旅と、キーウィ―が本土で体験する現実的で悲惨なバイト生活が交互に語られていきます。オッシーの逃避行の詳細は語られませんが、3人の兄妹たちは、このとき皆「それぞれの地獄」にいたのです。

やがてキーウィは誇り高かった両親が本土で隠れた仕事をしてきた事実を知り、エーヴァの旅も現実的で悲劇的な終わり方を迎えます。一家が「再会」を果たす最終章は一種の奇跡でもあるのですが、それは同時に兄妹たちが育った「スワンプランディア」の魔力が効力を失う時でもあったのでしょう。

本書に描かれた兄妹たちの「通過儀礼」は物悲しい結末を迎えるものの、フロリダの湖沼地帯という舞台は、そこにマジックリアリズムやゴチックホラー的な色彩を与えてくれました。もちろんその効果は、兄妹たちの記憶にも深く刻み込まれているのです。初期の短編集狼少女たちの聖ルーシー寮の冒頭に、本書の原型である短編「アヴァ、ワニと格闘する」が収録されています。

2018/4