りぼんの読書ノート

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大奥の座敷童子(堀川アサコ)

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時は黒船来航に揺れる徳川家定の治世。奥州野笛藩一の美女で14歳の今井一期に与えられた使命は、座敷童子を連れ戻るために江戸城大奥へ奉公に上がることでした。かつては野笛藩にいた座敷童子が50年前に大奥に連れ出されてから、藩の財政は傾き出して、今や危機的状況に陥っていたのです。

著者が描く大奥は、まるで女子社員たちがおしゃべりに興じる更衣室のようですね。篤姫が嫁いでくる前で正室不在ということもあるのでしょうか。厳しく恐ろしい年寄の嵐山がいないところでは、噂話が飛び交っているのです。しかも怪談じみた話が多いのは何故なのでしょう。枕絵を置いて回るいたずら者の「サダさん」や、人が死ぬ歳に泣く「泣きジジ様」や、嵐山が外出すると現れる「髑髏獅子」らの正体は、何なのでしょう。

「つるりとした玉子型の顔に、細い線で描き込んだような目鼻立ちが優しい」一期は、同僚たちだけでなく、犬や猫からも、妖怪や幽霊たちからも妙になつかれてしまいます。そんな中で一期がつきとめた、50年前に野笛藩から大奥に奉公に出た女性とは、意外な人物だったのです。その人物は今でも陰謀を企んでいたのですが、座敷童子は既に彼女のもとにはいませんでした。

もちろん一期の活躍で秘密は暴かれ、藩は救われるのですが、座敷童子の正体が良かったですね。しばらく座敷童子は一期とともに大奥に留まりそうです。ということは続編もあるのかもしれません。ほっこりする作品でした。

2018/2