りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

幻想郵便局(堀川アサコ)

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大奥の座敷童子の読後感が良かったので、著者初期のファンタジーを読んでみました。リアルさとシュールさのバランス感が良いですね。好きな作風です。

主人公は、履歴書の特技欄に「探し物」と書いたことから、不思議な郵便局でアルバイトをすることになった就職浪人生のアズサ。しかしちっぽけな山の上にある登天郵便局とは、この世とあの世の接点でした。

アズサが雇われた理由は、古い木簡を捜し出すこと。狗山比女を祀った古い社の跡地に建てられた登天郵便局は、気性の激しい女神と地権を争っていたのです。幸いなことに女神は封印されているのですが、彼女が眠りから覚める前に地権を確定させておかないと、郵便局の職員レベルでは歯が立たない模様。

そこに絡むのは、何者かに殺害されて成仏できないままの真理子さんの霊と、いまだに人間界で逮捕されていない殺人犯の存在。つまり、神界、霊界、人界の3つの物語が同時並行的に進んでいく点が、本書の読ませどころ。

3つの世界でそれぞれ異なる善悪感を巧みに描き分ける世界観と、不思議な出来事をそのまま受け入れながら「自分探し中」の主人公の軽いキャラが、よくマッチしています。このあたりが、読後感の良さの理由なのでしょう。「幻想シリーズ」となっていますので、もう少し読んでみたいと思います。

2018/3