りぼんの読書ノート

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雪蟷螂(紅玉いづき)

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ミミズクと夜の王MAMAに続いて書かれた、著者初期の「人喰いファンタジー3部作」の最終譚です。

冬の山脈で長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族の和解の条件は、若い族長同士の政略結婚でした。しかし、想い人を喰らう「雪蟷螂(ゆきかまきり)」の異名を持つフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰するミルデ族長オウガとの結婚は、何者かによって阻まれてしまいます。アルテシアは、彼女を盲目的に慕う近衛兵トーチカを連れて、障害を取り除くために山奥に住まう盟約の魔女を訪れるのですが・・。

「人喰い」とは、激しい愛憎の感情が生んだ伝説なのでしょう。しかし誰と誰の愛情なのか。アルテシアを取り巻く婚約者のオウガ、近衛兵トーチカ、さらに女王の影武者として育てられた侍女のルイの間にあるものは、愛情なのか、憎しみなのか。さらには直接剣を交えた過去を持つ、先代のフェルビエ王妹とミルデ王の関係とは、どのようなものだったのか。激しい愛憎関係が渦巻く舞台として、氷雪に閉ざされた冬山はふさわしそうです。

以前の2作と比較すると、ストーリーがよくできている分、迫力は減じているように思えます。この作品だけを取り上げると中途半端感が残るのですが、後の傑作ブランコ乗りのサン=テグジュペリに至る過程と思うと頷けます。

2018/3