りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

まく子(西加奈子)

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もともとはサラバ!の前に、ジュブナイルとして書き始めた作品だったそうです。直木賞受賞後にあらためて書き直した所、平易な表現を用いながらも「かつて子どもだった大人のほうが楽しめる、びっくりできる小説になった」とのことです。

「まく子」とは、温泉町の旅館で働くためにやってきた母親の娘で、背が高くて目が綺麗な小学5年生の美少女のコズエのこと。なんだってパーッと撒くことが好きなことから「まく子」なのですが、撒くという行為には、どことなく男性的なものを感じます。

コズエと同級生になった慧は、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしくて仕方ありません。もちろん自分の身体が「大人」になっていくことは、もっと怖いのです。そんな慧は、変わって行くことを怖れずに自然に受け入れ、自由に振る舞っているコズエのことが、気になるのです。やがてコズエと城跡の石垣でさまざまな話をするようになった慧は、自分のことを宇宙人と言い出したコズエに心底驚いてしまうのですが・・。

コズエは、小学5年生の時にエジプトから日本に転校してきて、空気を読む女の子になってしまった著者が、「実はそうなりたかった女の子」だそうです。もっと自由で良かったのではないか、別のやり方があったのではないかとの思いが、コズエに託されているとのこと。

コズエになれなかった女性にも、コズエのような子を信じきれなかった男性にも、読んでほしい作品です。そしてラスト近くで起きた「奇跡」の意味について、考え込んで欲しいものです。

2017/11