りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ぐるぐる猿と歌う鳥(加納朋子)

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講談社が「かつて子供だったあなたと少年少女のための作品」として刊行している「ミステリーランド・シリーズ」の1冊です。ハードカバーで、大きな文字で、漢字にはルビがふってありますが、大人の鑑賞にも耐える作品になっています。

父親の転勤で東京から北九州に転校することになった、小学5年生の男の子・森(しん)が主人公。わんぱくで乱暴者というレッテルを貼られていた森は、新しい小学校で心機一転やり直すつもりだったのですが、まず言葉が通じない!それでも、近所のおとなしい少年・ココ、気の強い女の子・あや、男ばかり4人の竹本兄弟とは気が合って、やれやれ状態。

しかし皆、会社の社宅住まいなので、前の学校の情報も次第に洩れてくるのです。いじめっ子の少年に悪い噂を振りまかれてうんざりもしますが、この社宅には、それどころではない大きな謎があったのです。

木登りをして偶然発見した、ズラッと並んだ社宅の屋根に描かれたナスカの地上絵のような、猿と鳥の絵は誰によるものなのか。謎の少年パックとは何者なのか。さらにプロローグで紹介された、森が幼稚園の頃に知り合ったものの、誘拐未遂事件の後で姿を消した女の子の話は、どう関係してくるのか。

もちろん、「日常の謎」の名手である加納さんのことですから、全てはピタッとおさまります。少女の謎も、ココ君の秘密も、竹本兄弟の気持ちも、森くんの悩みの原因も一応の解決を見るのですが、その謎を解いてくれたのは、パック少年だったのです。それなのに、彼の存在自体が一番謎めいているのですが・・。加納さん自身が語っているように、いつか続編を書かれることを期待しています。

2016/6