「時代劇ファンタジー」なのでしょうが、全体構成も、場面描写も、クォリティの高さを感じることができませんでした。発想が優れているのかとも思ったのですが、巻末の解説を読むと、あるコミック作品の設定を借用しているだけのようですし。なぜか続巻も出ているようですが、この人の作品は、もういいかな。
とりあえず概略だけでも記しておきましょう。主人公は宮本武蔵の弟子である伊織。亡き母を蘇らせる外法に失敗して、なぜか弟が白狐と化してしまいます。人間の姿に戻るため、本物の外法使いを探し続ける兄弟が辿り着いたのは、夏の陣で落城寸前の大坂城。
天守閣に乗り込んだ家康の前に立ちはだかったのは、淀君に化けていた武蔵の妻・お通。外法使いであるお通が、秀頼の身体を借りて蘇らせたのは、なんと織田信長。信長が蘇らせた森蘭丸や豊臣秀吉、お通の娘であるおこうや、陰陽師の流れをひく少女ユキ、女装癖のある真田雪村らを交えた戦闘はカオス化していくのですが・・。
気になった点をもうひとつ。恐るべき能力を持ちながら一膳飯屋でのバイト命になっているユキというキャラは、高橋留美子さんのデビュー作「勝手なやつら」の主人公で、宇宙人に拉致されながら新聞配達に命をかける少年ケイ(明らかに諸星あたるの前身です)を参考にしていませんでしょうか。
2015/11