りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ナオミとカナコ(奥田英朗)

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女性たちによるDV夫の殺人というと桐野夏生さんの『OUT』を思い出しますが、女性2人の友情という点では映画「テルマ&ルイーズ」のほうが近いかもしれません。広末涼子内田有紀のW主演でドラマ化もされた作品です。

望まない職場で憂鬱な日々を送るキャリアOLの直美と、夫のDVに耐えている専業主婦の加奈子は、大学時代の同級生。加奈子を惨状から救い出さないと思いつめた直美が、「排除」という選択に至ったのには、さまざまな伏線がありました。ひとつには母親が父親からDVを受け続けた結果、不幸な生活を送り続けていること。しかしそれよりも、デパートの外商業務を通じて知り合った中国人の女性実業家が、本気かつ強気で生きていることを知った影響のほうが大きいのかもしれません。

銀行員であるDV夫を陥れるために痴呆症の老女から信頼を得たことや、DV夫とそっくりな中国人密入獄者の存在を知ったことが、「排除計画」を実現可能なものにしていきます。そして決行。しかし、完全犯罪というわけにはいきません。2人は次第に追い詰められていくことになります。

帯に「やがて読者も二人の〈共犯者〉になる」とありますが、犯罪者となる女性たちに共感を抱かせるような展開は見事です。そのためには犯罪を「必然」と思わせるほど、2人を追い込んでいかなければならないのですが、その点は成功していますね。

2017/9