りぼんの読書ノート

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大正箱娘 2(紅玉いづき)

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前作大正箱娘から1年後の続編ですが、この間、著者は出産されたとのこと。おめでとうございます。

どんな箱も開けることができるという「箱娘」こと回向院うららの存在は、国家の最高機密とされ、この世界がどこか歪んでいることと関係しているようなのですが、そのあたりの謎解きは次巻以降になるのでしょう。本書ではなぜか「箱娘」の友人となった、女性であることを隠して新聞社で働く新米記者の英田紺が、万病に効くという「箱薬」の謎に挑みます。

「第1話 箱薬」は、同居している盲目の老翁の病を治すために箱薬を手に入れようとする、異国の血が混じった少年の物語。どうやら箱薬が密かに巷で取引されているのは、製薬会社の秘密の人体実験のようなのですが、死すべき存在である人間が「治る」とはどういうことなのでしょう。

「第2話 薄幸佳人」では、前巻で紺と因縁ができた「放蕩子爵」こと時村燕也が再登場。情報を盗み出し悪事を暴き立てる「怪人カシオペイア」の予告状が、燕也の友人という病弱な青年伯爵の屋敷に届いたというのですが、彼が抱える秘密とは何なのでしょう。

「第3話怪人カシオペイヤ殺人事件」では、製薬会社の新薬発表の祝賀会の場で、会社オーナーの次男で新薬開発ものであった次男が死亡。しかも彼の懐から発見されたのは、怪人の仮面。「悪食警部」の室町は、時村燕也を容疑者として逮捕したものの、箱娘うららの登場で事件は解決されるのですが・・。

「怪人カシオペイヤ」の輪郭は明らかになりましたが、彼(もしくは彼ら)が最終的に突き止めようとしているものは、世界の歪みに関わる謎のようです。「箱薬事件」は「人間の差別と選別」という問題を内包していたものの、それだけでは普通の世界の事件ですね。この問題が、世界の歪みと関係しているのかどうかも、次巻以降で明らかになるのでしょう。

2017/9