りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

狸穴あいあい坂(諸田玲子)

 

f:id:wakiabc:20191229151854j:plain

舞台は江戸。時代は天保といっても、大飢饉や大火が起こる前のことであり、比較的平和な時代。かつて火盗改与力として豪腕をふるった祖父・溝口幸左衛門と暮らす結寿は17歳。しきりに嫁入りを進める義母との関係が煩わしく、実家を離れて麻布狸穴で一人で暮らし始めた祖父の世話を名目にして、伸び伸びと暮らしています。 

 

狸穴という地名は残っているものの、もう狸など棲んではいないのですが、結寿は坂道の途中でムジナを探している男と出会います。どうやら何かの捜索をしている模様。精悍だが飄々とした佇まいで10歳ほど年上のその男・妻木道三郎に心惹かれた結寿でしたが、彼は八丁堀同心だったのです。火盗改と町方は手柄を競い合う犬猿の仲だったのです。 

 

妻木が探していたムジナの正体は、妻子が火盗改の捜査の犠牲なったことを恨みに思う老人でした。2人はそれをきっかけにして、祖父に内緒で狸穴界隈で起こる不思議な事件の謎を解いていきます。旗本屋敷から誘拐された赤ん坊、武家に出入りする表具師が短冊をすり替えたの理由、武家娘と植木屋の心中事件の謎、祖父の碁敵である俳諧師が老いらくの恋をした顛末、少女が転落死した理由、そして友人の妹がかどわかしにあってしまった悲しい事件、最終話では祖父も2人の関係を認めたかと思われたのですが・・。 

 

凶悪犯を相手にする火盗改は、問答無用で容赦ない取り調べをするので、人情の機微にはうといのですね。結寿はそれをわかっているので、微妙な事件に出会った際には、祖父ではなく町方の妻木に依頼するのです。続編も2巻出ているとのこと、天保のロミジュリの関係がどのように進展するのか、続きも読んでみましょう。 

 

2020/1