『怒りの武装』と並び称されるスタインベックの名作を初めて読みました。もっともジョン・マルコヴィッチ主演の映画を見たことがあるので、初独と言う感じではありませんでしたが。
舞台は大恐慌時代のカリフォルニア。雇われ労働者のジョージとレニーは、いつか自分たちの農場を持ちたいとの夢を持ちながら農場を渡り歩いています。しかしこの2人は対照的であり、その関係はほとんど一方的なのです。小柄で頭の回転の速いジョージが、巨大な身体と強い力を持ちながら知能の低いレニーを世話し続けているのは、かつて世話になったレニーの伯母クララから依頼されたから。
このレニー、ハツカネズミやウサギなど可愛くてフワフワしているものには目がなくて可愛がるのですが、強大な力を持て余して最後には殺してしまうのです。はたして今度の農場には、若くて美しくてフワフワした髪を持つ、ふしだらな妻がいるのですが・・。
もう展開はわかりますよね。小金を貯めていた不具の老人が2人の夢に乗ることで、夢に一歩近づいた2人でしたが、最後は悲劇で終わります。物語の途中に登場する、死期の迫った老犬をひと思いに殺してあげる場面は、悲しいラストシーンへと向かう伏線にほかなりません。展開が読めてしまう短篇ですが、不遇な民衆に寄り添って、彼らが置かれている現実のやるせなさをドラマチックに表現する姿勢が素晴らしい作品です。そしてこのヒューマニズム的な視点が、最高傑作である『怒りの葡萄ブドウ』に繋がっていくのです。
2020/1