りぼんの読書ノート

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冬の日誌(ポール・オースター)

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64歳の誕生日を目前にして「人生の冬」に入ったことを自覚した著者が、「手遅れにならないうちに」自己の半生を語った回想録です。 

 

幼い頃のの大けが。性の目覚め。パリでの貧乏暮らし。暮らしてきた家々。妻との出会い。母の死・・。「君」という二人称で語られる自分史は極めて率直であり、著者が過去の自分に対して抱いているであろうく共感、同情、悔悟などの感情を、読者が共有することを許しているように思えます。 

 

執筆活動についてはほとんど触れられていませんが、さまざまな著作を知っている読者としては、「このように張り詰めた人生を送ってきた人物が、あのような作品を生み出してきたのか」という感慨にも浸れますね。本書を含んで著者の作品の大半を翻訳してきた柴田元幸氏も、同じような感想を抱いたようです。もっとも私の読み方など柴田氏の足許にも及ばないことなど、言うまでもありませんが。 

 

このように緊張感に満ちた回想録を読むと、チコちゃんに言われるまでもなく、自分に対して「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱り飛ばしたい気分になってしまいますね。 

 

2020/1