りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

狸穴あいあい坂 心がわり(諸田玲子)

f:id:wakiabc:20191229152505j:plain

シリーズ第3作では、主人公である火盗改方与力の娘・結寿の境遇が大きく変わっています。狸穴の坂道で出会って以来、思いを募らせていた八丁堀同心の妻木道三郎と結ばれることをあきらめて、親が決めた御先手組の小山田家へ嫁いだのです。 

 

認知症のお婆さまの親類と称する男・柘植平左衛門が、小山田家の離れに住み着いてしまったのです。妙に人懐こい平左衛門は、お婆さまに気に入られ、自分の居場所を確保してしまったのですが、はたして彼は見かけ通りの好人物なのでしょうか。実は彼によって小山田家に災難が降りかかってくるのですが、結寿は万之助とともに、危機を乗り切ることができるのでしょうか。 

 

その事件を大きな流れにして、小さな事件も起こります。結寿の祖父に気に入られた美女の正体。父親に疎んじられたと思い込んだ少年の心の動き。義弟・新之助と思いあっていた女性の心変わり。それらの事件で道三郎と関わりを持つ結寿ですが、彼女はもう大人の女性ですね。ラストで見せる彼女の強さにはほれぼれしてしまいます。 

 

このシリーズは結寿の成長譚でもあったのですね。編集者の八代さんは後書きで、「3作のカバー絵には、結寿が娘から恋する女、そして新妻へと変わっていくさまが見事に描かれている」と述べていますが、全く同感です。 

 

2020/1