りぼんの読書ノート

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講談 碑夜十郎(半村良)

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NHKの時代劇ドラマやコミックにもなった「半村SF奇伝」です。

時は天保、ところはお江戸。闇にそびえる巨大な石碑の傍らに素っ裸で倒れていた、別の世界から来たらしき男・・というと「ターミネーター」をイメージしてしまいます。しかしその男は、記憶を全て失っていました。そこに通りかかった美女は、歌舞伎の舞台用の造花作りの元締めという表の仕事の裏で、女盗賊の首領でもある花房のお絹。彼女によって「碑(いしぶみ)夜十郎」と仮の名を付けられた男は、「天保六花撰」の面々とともに、江戸の悪を正す活躍をするのですが・・。

夜十郎とお絹が、河竹黙阿弥の『天衣紛上野初花』でお馴染みの御数寄屋坊主・河内山宗俊や、御家人崩れの直侍こと片岡直次郎や、花魁・三千歳らの「天保六花撰」メンバーと絡んでいく様子がいいですね。はじめは敵として登場する剣客・金子市之丞や札差・森田屋清蔵も、最後には同志になりますし。

悪役として登場するのは、青鬼との異名を持つ火盗改めの不良旗本・永井五衛門や、まだ町奉行になる前の鳥居耀蔵ら。黒幕には西の丸老中・水野忠邦や、将軍家斉の老側近・中野石翁。水野と中野はライバルなのですが、次の将軍を巡って暗闘をしていたという設定。やがて、「巨人様」と呼ばれる謎の男の存在も明らかになってきます。

やはり夜十郎は、昭和の時代からタイムスリップしてきたことが次第に明らかになってきますが、こうなると彼が未来に戻れるのかどうかも焦点になってきます。そこは読んでの楽しみとして、徹頭徹尾、講談調で語られる「半村SF」を存分に楽しませてもらいました。

NHKドラマで夜十郎を演じたのは阿部寛で、お絹は黒木瞳だったとのこと。放映されたのは1996年から1997年というから、20年前ですね。写真を見ると2人とも若いです。

2016/9