りぼんの読書ノート

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僕僕先生 零-王の厨房(仁木英之)

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ニート少年が少女姿の仙人と出会う僕僕先生は唐の玄宗皇帝時代の物語ですが、本書の舞台は神話時代。微力の仙人として生を受けた僕僕の成長冒険物語のシリーズ第2巻です。

老君が作り炎帝黄帝西王母の三神が育む天地の調和が乱れ始める中で、炎帝は、創造主・老君が天開闢に用いた宝具「一」の探索を、水神・拠比と料理担当の未熟な僕僕に命じます。一方の黄帝は、異変を解消する手段として「人」を創り出して「祈り」の力に期待するのです。

前巻で、ようやく見つけた「一」に反応する鏡を黄帝配下の仙人に奪われた拠比と僕僕でしたが、この巻では人間の国・栄陽を訪れます。そこは、飢え苦しむ中で「一」の欠片を手に入れた王の辺火が、側近で厨師の剪吾とともに造り上げた国だったのです。

常に強烈な飢えに襲われている辺火を、常に新鮮な料理を作り出して支えてきた剪吾でしたが、もう限界。拠比と僕僕は、「一」の欠片を入手するために王を満足させる料理を作ろうと、剪吾に対して料理対決を挑むのですが、問題は勝敗ではありませんね。実際の勝負の相手となった、黄帝の四真部のひとり白仁子は、禁忌を破ることによって王を満足させようとするのですが、それは新たな刺激を求めることにしか繋がりません。

食べることの本質に迫る試みは、なかなか深いですね。料理の本質「一」の欠片を探す旅の仲間に、蓬莱山の蟠桃の化身・桃稔、拠比に憧れる少女・昔花、辺火のもとを離れた剪吾が加わりました。微力ながら叡智の煌めきを見せる僕僕の成長物語は、まだまだ続きそうです。

2017/2