りぼんの読書ノート

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僕僕先生9 恋せよ魂魄(仁木英之)

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シリーズ第9作は、大きな転換点となりました。ダメ青年の王弁が、美少女型の仙人・僕僕先生に連れられて中国辺境への修行の旅に出る物語は、前巻の仙丹の契りで終了。ちょっとだけ成長して仙人へと近づいた王弁は、長安への帰路につきます。これまでの「旅の仲間」はそれぞれに居場所を見つけており、帰路はオネエの怪人デラクとの3人旅。

もちろん王弁クンの修行は終わっていません。途中で出会った不治の病にかかった少女タシとの出会いは、彼をもう一段成長させてくれました。王弁が近づくと快方に向かい、離れると悪化するという病状を、薬師としてどう治療するのか。そもそも人間の寿命という問題に、どのように向き合うべきなのか。

一方で、歴代の唐の皇帝に仕えてきた間者集団・胡蝶の頭目である貂は、古代の炎帝神農が最後に作り上げようとした神仙を上回る力を手に入れようと策動しています。王弁らとよしみを通じた裏切り者の劉欣を処分して、仙骨を取り上げようとするのですが、王弁らの支援は間に合うのでしょうか。

辺境で理想郷を作り上げようとして失敗したラクスもまた長安へと向かっています。なんと彼の漢名は安禄山。さらに、これまでも僕僕先生と敵対していた蓬莱の妖人・王方平は、古代の力を復活させて南極衡山の仙女を追い出し、新たな拠点を構えた模様。彼らの思惑はいったい何なのでしょうか。

ついに仙骨を手に入れた王弁クンは「人の命に手を出して己の願いを満足させようというのは、馬鹿な企み」と理想を述べますが、超一流の怪人や神仙たちの間では、まだまだひよっこ。しかしラストで僕僕先生は言うのです。「この旅は、もうキミのものになりつつある」と。もはやダメ青年ではなくなった王弁クンですが、まだまだ成長していかなくてはならないようです。

2017/8