ニートのダメ青年の王弁クンが、ツンデレ美少女仙人の僕僕先生と旅を続けていく中で成長していく物語は、『第9巻 恋せよ魂魄』でほとんど終わっていたのですが、旅路の果てに2人を待っていたのは「人間界の滅亡」というとてつもなく大きな問題でした。しかも、人間界を滅亡させるのは僕僕であり、王弁はそのための道具だというのです。
もともと天界では、人間界の扱いについて議論があったようなのです。常に争いを起こしながら発展してきた人間は、いずれ天界に影響力を持つ前に滅ぼされるべきという意見と、それに対する反対論のどちらが勝利するのでしょう。そして、かつては炎帝の最終兵器でもあったらしい僕僕は、常に破滅の象徴だったという過去も、事実のようなのです。
天界を統べる玉皇大帝の命を受けたとして、僕僕を捕獲しようとする王方平には、また別の邪悪な狙いもあるようですが、僕僕の前に次々と恐るべき相手が現れます。天竺への旅のあと天界の将軍となっている孫悟空、猪八戒、沙悟浄、そして「三国志」の英雄である関羽。誰が敵で、誰が味方なのか。天界の意志はどうなるのか。僕僕が「やるべきこと」とは何なのか。全ては混沌としたまま、最終巻へと続いていきます。
「混沌」といえば、やはり人間界を滅ぼすことになるのは「渾沌」であり、王弁クンは危うく闇に落ちてしまいそうになるのです。思えば『第1巻』での出来事は、このための予兆だったのでしょうか。そして僕僕の思わぬ告白によって、闇の力から逃れた王弁クンが目覚めたのは『第7巻 童子の輪舞曲』の「福毛」の世界のようなのです。次の最終巻での展開が気になるところです。
2017/8