りぼんの読書ノート

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僕僕先生8 仙丹の契り(仁木英之)

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シリーズ第8作の舞台は現チベットである吐蕃へと移りますが、その前に「旅の仲間」の入れ替えが起こります。第2巻からレギュラーだった幸薄い薄妃と、第5巻から登場したガッツある少女の蒼芽香は、程海に留まることを決めました。また、本巻の中心人物となる吐蕃人医師ドルマとも、ここで別れることになるのでしょう。旅とは、自分の居場所を見つけるためのものでもあるのです。

さて、僕僕と王弁らが向かった吐蕃は大きく揺れていました。漢民族との軋轢が増え続けていることに加えて、後継者であった皇子が英才教育を嫌って出奔した後、実権を握った王弟によって幽閉されていた王テムジンの病が篤くなっていたのです。その皇子こそドルマだったのですが、この時期に帰ってくるなんて、御家騒動の激化は間違いなし。

しかも「人間にして人間を超える力を持つ厚化粧のオネェ」という謎の怪人デラクという、ややこしい存在や、これまで幾度となく僕僕の前に現れた妖人・王方平も絡んでいるという、ややこしい情勢。

そんな中で、老王テムジンの病の原因が、古の協力な神を用いた「呪い」であることが判明します。それを治すことができるのは「仙丹」だけであり、僕僕が「仙丹」を作るためには、「最も親しい者との交わり」が必要だというのです。草食男子の王弁クンは昇天するほど喜ぶかと思ったら、かなり引き気味。さて、どうなるのでしょうか。

ここまで中華から離れて辺境へと向かってきた一行ですが、この後は長安へと戻ることになります。「ロードムービー」でもあり、王弁クンの「成長物語」でもあったこのシリーズは、いろいろな意味で転換点を迎えることになりました。旅の「帰り道」は早そうです。

2015/7