りぼんの読書ノート

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狐火の家(貴志祐介)

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衝撃的な未来図を描いた新世界よりと同じころに出版されていますが、こちらは比較的正統派のミステリ。何しろ、美貌の弁護士・純子と、防犯探偵・榎本のコンビが解き明かす「密室殺人の謎」ですからね。もっとも本書は、4年前の『硝子のハンマー』の続編であり、書き下ろしの第4話以外は、それ以前に文学誌に発表されていた作品です。

「狐火の家」
自宅で娘を殺害した犯人として、第一発見者である父親が容疑をかけられます。犯行現場は事実上の密室であり、他の容疑者の存在が否定されてしまったのです。依頼されて密室の謎を解いた純子と榎本でしたが、今度は、家出中の長男の元カノが東京で殺害されてしまいます。犯人は長男なのでしょうか。

「黒い牙」
自殺した男性が遺したペットの譲渡を巡って、故人の友人と妻が争う事件の仲裁を頼まれた純子は、ペットの正体を聞いてビビります。しかし、あらためて調べた男性の死亡状況は、事件性を感じさせるものでした。ペットが飼われていたアパートは密室だったのですが・・。

「盤端の迷宮」
アチェーンがかかったホテルの一室で殺害されていたのは、プロの将棋棋士でした。しかも、死の直前にホテルに電話をかけてきたのは、「将棋界のアイドル」と言われる美人女流棋士だったのです。2人は交際していたというのですが、殺害された棋士は嫌味な性格だったようです。榎本が将棋マニアでなければ、解決しなかったかも。

「犬のみぞ知る」
番犬のスピッツがいた部屋で劇団座長が殺害された事件の容疑者は、アリバイのない3人。犯人は、犬に吠えられる犬嫌いの男なのか、犬アレルギーの男なのか。それとも犬扱いに慣れていた女なのか。犯行の合った夜に、なぜ番犬は吠えなかったのでしょうか。「これは密室でなかった」という解決を聞くと、唖然としてしまいます。

2015/7