りぼんの読書ノート

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僕僕先生6 鋼の魂(仁木英之)

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このシリーズも第6作になりました。はじめは美少女姿の仙人に惚れた純情青年の冒険譚でしたが、途中から一気に深いテーマを扱うようになってきたシリーズです。そのあたり、プロットとキャラで売り出した「しゃばけシリーズ」が、次第に死生観、宇宙観を帯びてきたことと共通しているように思えますね。恐るべし、「日本ファンタジーノベル大賞」受賞作家たち!

さて中国各地を旅する僕僕先生と王弁らの一行は、雲南の国境地帯にやってきました。程海と呼ばれるこの地域はどこにも属さないのんびりした地方だったのですが、今や大唐帝国と、吐蕃チベット)と、この地域で大国になりつつある南詔国の3つの勢力が接する対立の地になりつつありました。唐の玄宗皇帝は暗殺集団「胡蝶」を送り込んで地域の撹乱を狙い、南詔国からは大軍団が迫り来る中で、今まで程海で暮らしていた人々のは運命は「風前の灯」状態に。

一方ここには、過去を隠して孤児を育てる元胡蝶の「捜宝人」の宋格之と、彼に父親を殺害されながらともに暮らしている美女・紫蘭がひっそりと暮らしていたのです。程海を守るために宋格之は、僕僕先生と王弁の手を借りて、もともと彼が探し続けてきた伝説の「鋼人」を探し出そうとするのですが、「鋼人」の正体の裏には、太古の悲しい物語があったのです。

「鋼人」もまた、僕僕先生の知人でした。黄帝炎帝の大戦後、戦争孤児たちを引き取ってひっそりと暮らしていた優しい母の刑天の似姿こそが「鋼人」の正体だったのですね。果たして、程海の平和は守られるのでしょうか・・。

古代の神々の戦いの名残りから、僕僕先生の正体が徐々に明らかになっていきます。どうみても不釣合いな王弁クンですが、このシリーズは彼の成長物語ですから、修行と敬虔を積めば少しは近づいていけるかもしれませんね。

2012/9