りぼんの読書ノート

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僕僕先生 零(仁木英之)

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唐の玄宗皇帝の時代に、ニート青年の王弁君が美少女形の僕僕先生と旅をしながら成長していく本編の、「エピソード・ゼロ」にあたる物語です。ただ、中途半端な終わり方に思えますので、ひょっとすると「新シリーズ」のはじまりなのかもしれません。

天地がまだ若かった時代。原初以来、次々と創造を続ける炎帝、天地に秩序を与える黄帝、生殖と因果を管理する西王母の三神によって営まれてきた天地に、異変が発生。どうやら、天地創造以来、この世界を成り立たせている「気」が枯れつつある模様。要するに資源問題ですね。さらに、今後の対応を巡って、三聖の間に対立が生まれているようなのです。

水を司る神・拠比は、炎帝の命を受けて、異変を解消すべく、創造主・老君が天地開闢に用いた宝具「一」を探す旅に出ます。力を削がれて不自由な人間の形とされた拠比に、料理を提供する相棒としての役割を与えられたのが、僕僕先生だったのです。一方で、黄帝は「人類」を創出して、「祈り」という新しい力を生み出そうとしているようなのですが・・。

拠比というと、先生の隠しごとで、僕僕先生の「元カレ」として名前があがっていた神ですね。同時に、天地を荒廃させた炎帝黄帝による大戦争があったことが述べられていましたが、ひょっとしてこのシリーズは、「スター・ウォーズ」の「エピソード1~3」のように、大悲劇で終わることになるのでしょうか。

ともあれ、遥かな高みにいる神仙たちの前では弱っちい存在にすぎないという、「僕僕仙人」の役割は新鮮です。その一方で、もっとも叡智を感じさせる存在であることには、「彼女らしさ」を感じます。

2015/6