りぼんの読書ノート

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千里伝(仁木英之)

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中国唐代。征東大将軍の高承簡と、もとは上半身は絶世の美女ながら下半身は猛禽という姿をしていた異類の母親・紅葉の間に生まれた少年・千里は、18歳になっても外見は幼児のままでした。しかしこの少年は、人類と異類のいずれを大地の支配者とするかを定めた、神話時代に起こった神々の戦いに決着をつけるために生まれた者だったのです。 

 

一度は選ばれた人類の支配が揺らいだ原因は、武帝にあったようです。西王母から預けられた「五獄真形図」を用いて天地の在り方を定める機会を得ながら、その任に応えることができなかったため、天地の片隅に押し込められていた異類たちに再びチャンスが訪れたのです。 

 

かくして千里は、彼に匹敵する能力を有するチベットの狩人・バソン、少林寺の少年僧・絶海ととともに、失われた「五獄真形図」を求めて旅に出ます。彼らは異類たちに先立って、図を手に入れることができるのでしょうか。また行方不明になっている両親は、彼らに何を求めているのでしょうか。 

 

壮大な物語構成であるのに対して千里の幼さが気になりますが、「天地を一新する器となる魂」の持ち主は、アンバランスな存在である必要があるのでしょう。物語的にも、千里の成長譚を描くことで面白さが増しています。 

 

2019/11