りぼんの読書ノート

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王様のためのホログラム(デイヴ・エガーズ)

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サウジアラビア国王の名を冠した建設中の大都市にホログラム技術を売り込むために、アメリカのソフトウェア会社から送り込まれたアラン。自転車製造会社で敏腕営業マンだった彼の任務は、国王に対して直接プレゼンを行うこと。しかし国王の来訪予定は判明せず、プレゼン機材を設置するための準備すら思うように進められません。 

 

変人の運転手にアドバイスされ、首のできものに悩まされ、密造酒パーティに誘われたり、なんと中年女性に誘惑されたりもするのですが、肝心の仕事は一向に進展しないまま。まるでカフカの『城』のように砂漠の迷宮をさまようアレンですが、ひとり娘の学資を稼ぐためには仕事を放り投げるわけにはいかないのです。 

 

おのずと過去を振り返るアレンですが、こちらはもっと悲惨。妻との離婚、娘との距離感、隣人の自殺、会社の倒産、残高が減っていく預金・・。アメリカにおける人間関係の破綻や製造業の没落が身に染みる思い出ばかりなのですが、ここで起死回生のプレゼン成功となるのでしょうか。もっとも終盤における「事件」のせいで、彼の内面で起こった変化のほうがはるかに重要なテーマになってくるのです。人生の迷路から脱出するには、結局自分自身の決意が重要なのですね。 

 

トム・ハンクス主演で2017年に映画化されたとのこと。未見ですが、これは絶対にハマリ役ですね。このストーリーで面白い映画になっているかどうかは保証できませんが。 

 

2019/11