10月には今年2度目の引越しがあったため、読書量が減っています。今年春の長距離移動と比較すると、市内移動で済んだ今回はまだ楽だったのですが、新居内での片付け作業量は一緒ですね。それに加えて実家の水害。ごみ捨て作業が果てしなかった・・。そんな中でも、素晴らしい本には出合えます。フランゼンの新刊が今年のベストかな?
1.ピュリティ(ジョナサン・フランゼン)
著者の思いは「ピュリティ」という主人公の名前にも現れています。「純粋という言葉の流布に疑問を提示したかったから」だそうです。そして彼女の愛称が「ピップ」なのには、明らかにディケンズの『大いなる遺産』が意識されていますね。若い女性を主人公に据えて、秘密と嘘、理想と現実、正義と不正、愛情と憎悪、罪と罰などのさまざまな要素が絡み合う、現代アメリカを代表する著者が紡ぎ出す家族小説は圧巻でした。
2.回復する人間(ハンガン)
後書きで「この本はほかの読み方をすることが困難なほどはっきりしている。それは『傷と回復』だ」と評されています。痛みを抱えて絶望の淵でうずくまる人たちは、どのようにして一筋の光を見出していくのでしょう。アジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞した韓国の若い女流作家の作品集は、痛みと苦しみに満ちていますが、一筋の光がうっすらと見えなくもない・・のです。
3.王様のためのホログラム(デイヴ・エガーズ)
サウジアラビア国王の名を冠した建設中の大都市にホログラム技術を売り込むために、アメリカのソフトウェア会社から送り込まれたアランですが、何ごとも思うようには進みません。まるでカフカの『城』のようですが、やがて彼の内部に変化が起こり、ある決意が生まれてくるのです。トム・ハンクス主演映画の原作だそうです。
【その他今月読んだ本】
・宗教が往く(松尾スズキ)
・草を結びて環を銜えん(ケン・リュウ)
・イモータル(萩耿介)
・五つ星をつけてよ(奥田亜希子)
・赤い人(吉村昭)
・千里伝(仁木英之)
・三人屋(原田ひ香)
・アメリカの鱒釣り(リチャード・ブローティガン)
・紅霞後宮物語 第9幕(雪村花菜)
・チンギス紀 4(北方謙三)
・まんまこと7 かわたれどき(畠中恵)
・古典の細道(白洲正子)
・秋霜(葉室麟)
・パレード(吉田修一)
・魔法使ひ(堀川アサコ)
2019/11/30