りぼんの読書ノート

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三人屋(原田ひ香)

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フランス語で「1日」という意味の「ル・ジュール」という店名なのに、街の人から「三人屋」と呼ばれているのには理由があります。この店は、朝はしっかり者の三女の朝日が営む喫茶店、昼は責任感の強い次女のまひるがを振るううどん屋、夜はセクシーな長女夜月が接待するスナックという、ちょっと変わったお店なのです。 

 

美女ぞろいの3人娘がそれぞれに美味しい食事を提供するとなると、流行らないわけがありません。しかし彼女たちの中にも微妙な葛藤があり、さらには娘たちを育てるためにオーケストラのピッコロ奏者の道をあきらめて、ここで喫茶店を始めた亡き父親への思いの深さも微妙に異なっているのです。 

 

3人娘の全員と駆け落ちしたという噂があるハンサムなスーパーの店長、三女にひと目惚れしたサラリーマン、出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店主などの地元常連客に加えて、亡父が録音したという幻のレコードで夜月を支配しようとするバーテンダーも登場し、三人娘の関係も崩れてしまいそうになるのですが・・。 

 

シナリオライターから小説家に転身した著者の作品だけあって、セリフの使い方が上手いですね。余分な説明を排除したテンポの良い展開も心地よい。ストーリー的には粗さも目立ちますが、美声の方の朗読で聞きたいような作品です。 

 

2019/11