りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

シェイクスピア物語(ラム)

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今から約130年前に、英国のメイリイ・ラムとチャールス・ラムの姉弟によって書かれた「あらすじで読むシェイクスピア」です。少年少女向けのダイジェスト版ですが、古い言い回しを大切にして時代の空気を壊すことなく、原作の世界観をわかりやすく描いているという優れもの。シェイクスピアの全戯曲37編のうち、20編が紹介されているのですが、本書にはそのうち13編が納められています。

テンペスト
前ミラノ大公プロスペローが、妖精エアリエルを使っての弟への復讐劇は成就するのでしょうか。そして、ひとり娘ミランダの恋の行方は?

真夏の夜の夢
父親の結婚命令を拒否して駆け落ちした恋人同士と友人カップルが、媚薬を使った妖精たちの鞘当てに巻き込まれて大混乱。ここまで紛糾したらもとの組み合わせに戻れないと思うのですが・・。

「冬ものがたり」
親友のボヘミア王と妻ハーマイオニーの密通を疑ったシチリア王は、妻を投獄して娘を追放。16年後、親友の息子であるボヘミア王子が、羊飼いの娘と恋に落ちてシチリアへとやってくるのですが・・。

「お気に召すまま」
公爵家の跡目を争った兄弟の娘で従弟同士のロザリンドとシーリア、不和な兄弟のオリバーとオーランドが、牧歌的な森で繰り広げる恋のゲーム。男装のロザリンドを見て、自分の恋人と気づかないオーランドって、いったい・・。

「ベロナの二紳士」
大都会ミラノに出てきて大公の娘シルヴィアに恋をして、友人ヴァレンタインと恋人ジュリアを裏切ったプローテュースでしたが、最後には後悔して元の鞘に収まるのです。この作品でも、プローテュースは男装したジュリアに気付きません。

ベニスの商人
借金の形に1ポンドの肉を要求したユダヤ商人シャイロックで有名な物語。バサーニオとアントーニオの友情よりも、判事に扮した美貌の貴婦人ポーシャが魅力的。高等遊民バサ-ニオにはもったいない!

リア王
末娘コーディリアの愛情に気付かないリア王の耄碌ぶりが、戦争を招きます。一番悲劇的な主人公は、リア王ではなく、最後に獄死するコーディリアでしょう。

マクベス
3人の魔女の予言、眠りを失ったマクベス、バンクォーの幽霊、押し寄せるバーナムの森、女から生まれなかったマクダフと、見どころたっぷりの本格悲劇。しかし、悪女の典型と言われるマクベス夫人は、意外と普通の神経の持ち主です。

じゃじゃ馬ならし
じゃじゃ馬カタリーナを従順な妻へと変えたペトルーキオは、完全なモラハラ野郎だと思うのですが・・。

十二夜
遭難して兄セバスチャンが死んだと思い込んだ双子の妹ヴァイオラは、男装してイタリアの公爵オーシーノに仕えますが、主人の想い人オリヴィアに恋されてしまうのです。実はセバスチャンも生きていて・・。グィネス・パルトローが演じた「恋におちたシェイクスピア」のヒロインの名前が、ヴァイオラでしたね。

ロミオとジュリエット
もはや説明は不要でしょう。以前ヴェローナに旅行して、一番肝心な「ジュリエットの家」だけ見落としたことを思い出しました。もちろんフィクションですけれどね。

ハムレット
ハムレットの友人ホレイショーを除く、主要な登場人物が全員死んでしまうのですがら、これ以上の悲劇はありません。復讐とは高くつくものなのです。

「オセロ」
この作品でも、たかがハンカチ1枚のことで、主要な登場人物は全員死亡。嫉妬も高くつくものなのです。

ロザリンド、ジュリア、ポーシャ、ヴァイオラと男装の美女が次々と登場するのは、当時の役者が男性ばかりだったせいかもしれません。でもシェイクスピア先生も、まさか全員女性のタカラヅカでも重宝されるとは思わなかったでしょうね。

2016/10