りぼんの読書ノート

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偽りの楽園(トム・ロブ・スミス)

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チャイルド44にはじまる、スターリン体制下の保安省捜査官デミドフのシリーズで人気を博した著者の新作です。

スウェーデンの農場を買って幸せな老後生活を送っているはずの両親から、思いがけない連絡が入ります。父親のクリスからは「お母さんは病気だ。精神病院に入院したが脱走した」と、母親のティルデからは「お父さんは悪事に手を染めているの。警察に連絡しないと」という電話が、次々とかかってくるのです。やがて父親を出し抜いてダニエルのもとに現れた母親は、スウェーデンの地域ぐるみで行われている悪事の証拠品を次々と見せるに至ります。

説得力ある母親の訴えの前では、情緒的でしかない父親の弁明は、完全に部が悪いですね。それでも真相を確かめるべく、スウェーデンへと向かったダニエルは、悪事の証拠を掴めるのでしょうか。それとも・・。

牧歌的で開放的なイメージの強い北欧ですが、児童への性犯罪や移民への排他性が意外と高いということは、統計的に知られています。本書は、その点を衝いた社会派ミステリという体裁で読者を引きつけるのですが、最後に明らかになったのは、家族の間の問題だったようです。主人公のダニエル自身、自分がゲイだということを両親に隠していたという秘密も、本書の展開の伏線になっているのですから。

2016/10