りぼんの読書ノート

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ヒトコブラクダ層ぜっと(万城目学)

鴨川ホルモー』でデビューして京都を中心とする関西地域を舞台とする作品を書いていた著者が、中国へと足を延ばしたのが『悟浄出立』でした。そして本書の舞台はなんとメソポタミア。思えば遠くまで来たもんです。

 

3歳の時に家に落ちた隕石で両親を失った3つ子の兄弟は不思議な能力を身に着けていました。長男・梵天は透視、次男・梵地はオールマイティな語学力、三男・梵人は3秒先の未来幻視ができたのです。その能力を泥棒に生かしていたのですが、ある日彼らの前にライオンを連れた謎の女性イナンナが現れたことで、彼らの運命は一変してしまいました。

 

彼らの悪事の証拠を握るイナンナの言いなりになって自衛隊に入隊すると、たちまちPKOでイラクに派遣されてしまい、アメリ海兵隊のエリート隊員とともに砂漠の探検に乗り出すハメに陥ってしまったのです。そして彼らが墜落した砂漠の底には、ヒトコブラクダのような形状を刻む古代地層に囲まれた異空間があり、その中心には古代メソポタミアのジッグラトがあったのです。

 

神殿に籠る女王エレシュキガル、襲い来るシュメールのゾンビ兵士、謎の円筒印章・・。戦闘に馴れた海兵隊員は次々に犠牲となり、残されたのは3兄弟と、なぜか巻き添えになってしまった女性自衛隊士。彼らは理由も目的もわからない使命を達成することができるのでしょうか。そしてそもそも三兄弟の不思議な能力や、彼らが選ばれたことにはどのような意味があったのでしょうか。

 

初期作品の登場人物たちは古代日本の謎に翻弄されていましたが、本書ではそれが古代メソポタミアの謎に置き換わっています。それらの間には共通点があるような、ないようなものなのですが、ひとつ大きな違いがありました。著者はSF的な謎の種明かしを用意していたのです。その点については賛否両論があるでしょうが、ここまでスケールアップされてしまった物語においては、ある程度の説明が必要だったのかもしれません。上下巻935ページを一気読みさせる面白い作品であることには間違いないのですが。

 

2022/8